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『一寸法師』内川清一郎 1955
銀座のサンドイッチマンをしていた和久井勉が一寸法師役。
乱歩のパノラマ島散歩をしているうちにふと迷い込んだのが乱歩・映画。
『一寸法師』(内川清一郎 1955)は、街と怪奇が溶け込んでいて、しかも小人が自在に闊歩していて面白い。
『一寸法師』は1927年、連載当時にも映画になっていて、監督は直木三十五、明智小五郎には石井貘がなっている。石井貘の舞台の相手役、石井小浪も出演していて、見て見たい。フィルムセンターには収蔵されていないみたいだが、どうにか見れないものだろうか。
映画はフィルムが失われると存在しないと同じことになってしまう。そこが本とは異るところだ。メディアの存在の仕方が変わっているから、今は、そんなことがないが、むしろ、本の方が危ういくらいだ。
江戸川乱歩は、1928年『パノラマ島奇談』と『一寸法師』を書き上げて、しばらく絶筆している。本人によれば自己嫌悪からだという。連載当時からもう作家はやめたいやめたいとぼやいていたようだ。純文学の作家になりたという気持ちが強かったのだろう。
『一寸法師』は、1948年にも市川哲夫監督で映画化されている。江戸川乱歩は三本の映画の一寸法師役の俳優にそれぞれ面会したり、飲んだりしたときのことを書きながら、三人の比較論を展開している。これもなかなか面白い。
update2008/06/06