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『月蝕書簡』 寺山修司著 田中未知編 岩波書店
母と寝ててのひらで月かくしみる父亡きあとの初の月蝕
地の果てに燃ゆる竃をたずねつつ父ともなれぬわが冬の旅
三人の按摩集まり一本の鉛筆でまわし書きする悲しき住所
田中未知に「質問」
という著作があるが、寺山修司は立っている地面、立っている自分に対しても常に疑問符を突きつけていた人なのだと思い知らされる。
「月蝕書簡」にはさまれている 佐佐木幸綱と寺山修司の対談には、問いを出していくことを作品にしていた寺山修司の前衛性がくっきりと浮かんでいる。物語の連続性を信じない。歴史の連続性は自分には必要がない。
そんなことを思うとき、物語の復権ということがいかに保守的なことであるか、改めて思い知らされる。寺山修司の対談、評論集を読みたくなった。
update2008/03/18