退化論 ノルダウ 『谷崎潤一郎と世紀末』松村 昌家編
世界は退化期に入った?
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夜想のヴァンパイアにもヴィクトリアンにも
キーとしてでてくるのが退化論だ。
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ダーウィンの進化論自体が退化という概念を現実のものとしてとらえる契機になったこともあるが、ノルダウの退化論が、大きな影響を与えた。誤読されてヒットラーの頽廃芸術という考えを生んだともされている。
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ノルダウの退化論、日本に入っては谷崎潤一郎をはじめとする明治期の作家に退廃という感覚を植えつけた。退化論を読みたいと思っていたが、古い訳が一つあるだけで、読めなかった。と、思っていたら、『谷崎潤一郎と世紀末 』に訳がのっていた。
訳は本当は『変質論』と訳すべきと…。ここでもだいぶ誤読があったかもしれない。まだまだ研究の途についたばかりだけれど、ノルダウと谷崎の関係は面白い。そしてそこに日本の小説の近代の闇の原点があることが想像できる。
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イギリス、ヴィクトリアン期は、日本の明治に大きな影響を与えている。とくに闇の部分に。もっと見ていくと面白いだろう。
それにしても金融危機の影響はすざまじい。世界がもう一度、退化論にみわまれることがないことを望みたい。ダーウィンもノルダウも誤読されての影響の方が大きい。誤読されやすいテーマなのだろうが、今度の世紀は知性をはたらかせたいものだ。
安全圏を走っていると思ったトヨタまで危機を表明した。F1を降りるなんて言わないだろうな。逆効果だぞ。危機にこそ姿勢が問われるのだ。嘘でも車文化が…と虚勢をはるべきだ。そこからきっと何かが生まれる。