日野まき Maki Hino
[人形感覚]
表情は、どこか昏くどこか晴れやかだ。
視線の在り処に人形独特の[遥か感]がある。
誰をも見つめ誰をも見ていない。日野まきのペーパードールはどこまでも人形感覚に充ちている。(今野裕一)
■ 日野まき「見つめる球体」

春の日やあの世この世と馬車を駆り →OnlineShop
■作品サイズ:幅320mm/高さ320mm/厚さ35mm
鴉 →OnlineShop
■作品サイズ:幅205mm/高さ275mm/厚さ35mm
鳥 →OnlineShop
■作品サイズ:約 200×200mm
■ 冬の金魚展

金魚 →OnlineShop
■作品サイズ:幅100mm/高さ100mm/厚さ35mm
日野まきの人形の表情は、どこか昏くどこか晴れやかだ。晴れやかさが少女で、昏さもまた少女かもしれない。いつの時代の少女なのだろうとふと思うことがある。
日野は、物語や詩歌から少女を今に連れてくる。
少女の人形は物語りを纏ってこちらにやってくる。その時代の薫りをさせている。
日野まきの人形が素敵なのは、ある場面のある時を切り取ってくるのではなく、物語や時代をすっぽりと身体に入れてこちらにやってくるからだろう。日野の人形に向き合いながら、僕は小説や詩をもう1度読返してみる。
そこには日野まきの憂いに充ちたうつむく姿がある。黄昏が似あう。でも日野はぺろっと分からないように舌を出しているかもしれない。少女もまた夜になると違った貌を見せる。お茶目な。人に通じない冗談を言ったりする。
(今野裕一)
■ 乱歩頌

「江戸川乱歩 押絵と旅する男」 →OnlineShop
■作品サイズ:約 幅416mm/縦565mm/奥行き56mm

「江戸川乱歩 人でなしの恋」 →OnlineShop
■作品サイズ:約 幅565mm/縦416mm/奥行き56mm
「人でなしの恋」
身体の中からね、蝶が飛びだしてくんですよ。どんどん、どんどん飛び出していくんですよ。 大野一雄が母親の死を語ってくれたことがあってその語り口からして甦った。
日野まきが、ここで描いているのは、夫と人形の道行を目の当たりにしたときの身体感覚。身体から蝶が飛びだしていく。どんどん空虚が増していき、私の瞳は虚ろになる。でも髪の毛が未練のように宙を漂っている。「私」が壊した人形ではなく、壊した「私」の虚空を描いたことだ。
見れば、私に叩きひりがれて、半ば残った人形の唇から、さも人形自身が血を吐いたかのように、血潮の飛翔が一しずく、その首を抱いた夫の腕の上へタラリと垂れて、そして人形は……「人でなしの恋」江戸川乱歩。
乱歩の人形は生きている。人形のまま生きている。人のように生きる、人のアナロージではなく、人形として生きている。それは「押絵と旅する男」でも。日野まきは乱歩の人形を捕らえている。
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「押絵と旅する男」「人でなしの恋」は、人形が出てくる乱歩の小説。人形と少女と男が耽美の歪んだトライアングルを渡っていく。
朗読の美術にその二作を依頼すると押絵で作品ができあがった。描かれているのは人形ではなく少女。少女の人形。耽美のトライアングルが描かれている。世界観、物語、登場人物、そして乱歩の場合には乱歩自身の視線。それらが混淆して表現されている。
創作人形がもつ表現力はモチーフや場面をダイレクトに形にするのではなく、含んだ奥のある世界をディテールに込められることだ。日野まきはその意味でも創作人形作家なのだと思う。
(今野裕一)
■ フランツ・カフカ
一輪車の少年、空中ブランコの少年、カフカの好きだったサーカス。
Kavka a Kafka (少年)
■作品サイズ:約 横130mm/縦300mm
★肩、肘、股、膝は関節状になっているので、動かせます。
→onlineshop
「Kavka a Kafka box」
■作品サイズ:約 縦400mm/横310mm/厚さ35mm
■素材:アクリル絵の具、鋲、厚紙
■少年は箱から取り外し、ポーズを変えることが出来ます。
sold out
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大人のカフカは彷徨する迷路を描いた。迷路自体が蠢くのだ。そのカフカが少年の時…それは想像をするというより妄想する他ないのだが、少女の似姿をして、まっすぐものを見ていたような気がする。
映画を見て、サーカスに心驚かせる少年。
少年は、将来、書くことに執着する指をもっているのだが、今は隠れて見えない。
大きな壁面を一枚の絵のように、パノラマのシーンのようにして人や鳥や木や水や、サーカスの小屋や、空中ブランコや、少年や、カラスが、配置される。少年が天国への階段をあがっていく。カフカ少年、君は君の未来を知っているのか。(今野裕一)
■ 夜想 物語の中の少女 Ⅱ

「秘密の花園」
■作品サイズ:約 縦323mm/横323mm/奥行き52mm
→Onlineshop
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ふと、誰かがこちらを見ているような気配を感じ、
それは少女なのかと、顔を覗き込んでみるけれど、彼女はそんなそぶりを見せない。
少女は、空に水に木々に、魚に鳥に…身体を同化させて穏やかな貌のままにいる。
少女のまわりで、風のように漣のようなひそひそ声が聞こえる。
その普通には聞こえない声を少女は聞いている。
髪の毛が、スカートが、手が、指が、腕が、声に応える。
日野まきが物語の少女を人形にするとき、
それは言葉の向こうにある聞こえない声を形にしているのだ。(今野裕一)
★パラボリカ・ビスでは、日野まきさんの作品を販売しております。
お求めは、会場またはOnlineShopまで。
日野 まき Maki Hino
長野県に生まれる。
1993年よりエコール・ド・シモンにて人形制作を開始。
1997年よりピグマリオン人形教室にて吉田良氏に学ぶ。
現在は貝殻を使った人形や、アクリル画を使用したpaper dollを制作。
立体でも平面でも人の形にこだわった作品を制作していきたい。
日野まき HP kitchen
http://makihino.org