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吉田美和子 Miwako Yoshida

■ 結晶少年 ■

吉田美和子が人形と出会ったのは、彼女がまだ学生だった70年代。
あの四谷シモンの記念碑的初個展「未来と過去のイヴ」だったという。
吉田の憧れる澁澤龍彦が推薦していたこの展覧会を見に、
青木画廊の狭い階段を上った事が、後に彼女を人形へとかき立てる。
人形と向き合う日々が始まったのは人形教室の存在を知りその門を叩いた40代から。
以来じぶんのペースで淡々と人形という表現に取り組んできた。
吉田美和子の人形といえば少年の人形が代表的であり認知も広い事と思う。
その少年人形にはどこか四谷シモンの手による少年達の佇まいが感じられる。
直接の師事を仰いだわけではないのだが人形を知るきっかけとなった
四谷シモンの存在は、今でもある種の磁場となって吉田の心を揺さぶり、
彼女の作品世界に波紋しているのではないだろうか。

とにかく作る事が楽しいのだと語る吉田は、完成した人形には執着を持たない。
一度完成してしまえば人形は作者とは別の存在として
立ち上がり歩いて行くのだという。
こうして「親離れ」した人形は作者の過剰な想いを背負うことなく送り出される。
吉田の作る少年人形の透明感は、彼女のそんな姿勢によるものなのかもしれない。
稀に少女の人形も作るのだが、少女には自身の嫌なところが
どうしても入ってしまうのだと吉田は言う。
じぶんも女だからついそうなってしまうと話す吉田は、
でも少年だとじぶんが入り込まないから純粋に仕上がると続けた。
現実に生きるじぶんが乗ってしまうのが少女なら、
少年は吉田の抱く幻想の部分が純化され結晶した存在なのだ。

吉田美和子はこれからも独自の少年世界を目指すのだろう、
自身の内にある幻想の鉱脈を探りながら。
(篠塚伊周)


Dolls

■グレーのジャケットの少年■


くるくるとした巻き毛と強い眉、輪郭にはまだあどけなさが残っている。
勝気な性格がのぞく鼻筋が印象的な少年だ。
彼が着ているかっちりとしたジャケットはやや袖が長い。
背が伸びてからも着られるようにと、
すこしだけおおきめの服を与えられたのかもしれない。
少年はまだじぶんで服を選べない。
母親か姉か。
誰かが選んだその服を着せてもらっているのだろう。
服装は整っているのに、だから少年の髪はちょっとばかりハネて乱れている。
髪型を気にするほどに、彼らはまだ大人ではないのだ。
少年の在り方に自身の作品世界を投影する人形作家・吉田美和子の作品には、
そんな物語が隠れている。(篠塚伊周)

★作品の詳細とご購入については パラボリカ・ビスOnlineshopから>>


■紺のジャケットの少年■


彼の部屋にはきっと、鉱物標本や天体の本、飛行船の模型があるはずだ。
そんな想像を誘う理科少年は、細身で手足はすんなりと伸び、
すこしばかり大人びて見える。
だが淡く紅がかった頬の丸みは、彼がまだ少年であることを示している。
膝頭が覗く丈のショートパンツは少年だからこそ似合う衣装だ。
人形の衣装は全て人形の作者である吉田美和子自身が手がけている。
人形が仕上がった時点でその子にもっとも似合う服装を考える。
生地はツィードやフラノなどのウールが基本。色はグレーや白、紺に黒。
仕立てはテーラーメイドのようにきっちりと、雰囲気はクラシカルに。
ロマンティックであってもちゃんと男物の服でなければいけない。
どの少年を見ても間違いなく「その子らしい」身なりをしているのは、
そこに吉田美和子の強いこだわりがあるからだ。(篠塚伊周)

★作品の詳細とご購入についてはパラボリカ・ビスOnlineshopから>>


Event

★パラボリカ・ビスで開催された「少年とウサギ」展で展示しておりました。お気軽にお問い合せください!

「少年とウサギ」展
2013年11月1日[金]〜2013年12月2日[月]
■月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00

■入場料:500円(開催中の展覧会共通)

■展覧会 会場:parabolica-bis[パラボリカ・ビス]

■東京都台東区柳橋2-18-11 ■TEL: 03-5835-1180 map


Profile

★吉田美和子 miwako yoshida
1973年 四谷シモン「未来と過去のイヴ」展で球体関節人形に出会う
1996年~ 大竹京に師事
2000年 「ドールアート展inうつくしま」出展 以降毎回出展 
2004年 「ドールファンタジア」入選
2005年 「Monthly K1- doll」(京都昔人形青山/K1ドヲル)
長野まゆみ「天然理科少年」(文春文庫)表紙に採用
個展「ガラス睛」(渋谷ギャラリー ル・デ・コ)
2006年 「現代ドールアーティスト展」(銀座松屋)
2013年 「少年とウサギ展」(パラボリカ・ビス)