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それでも、読書をやめない理由 デヴィッド・ユーリン

それでも、読書をやめない理由 デヴィッド・ユーリン

 iPadでは漫画までで、書籍は余り読む気がしない。それでも青空文庫をiPadで読むのは、少しの快感があって、たぶんそれは青空文庫には、電子書籍として読まれるという覚悟と、なぜ打ち込むのかという明確な理由があるからだろう。理由のあるものは、その美をもっている。電子書籍は、紙をただ移行したもので良いはずがなく、仮に移行だとしても、iPad用に、あるいはキンドルようにレイアウトされたものでないと、読みにくい。最底でもそれだけはして欲しい。しかし出版社の側からの理屈で言うと、それぞれにレイアウトをすると、コストがかかりすぎてとても出版コストに耐えきれない。とすると、自炊はするなと言いつつ、できるだけ自炊に近い形で、紙面を作るか、あるいは著者を含めた周辺の人に、コストを振り分けるかということになる。
 それでもiPadというメディアは魅力的で(もちろんキンドルにそれを感じる人もということも含めて)、日本でも電子書籍は生き延びるだろうとは、思う。しかし電子書籍がしょぼいと、紙の本もしょぼくしか売れなくなる。メディアというのはそいうものだ。共存は、相互がそれぞれに魅力的で競わないと難しい。本が生き延びるかどうかということを、そんな風にとらえていたのだが、この本を読んでがく然とした衝撃を受けた。
 本が読まれなくなる原因は、もっとネット脳的なことにあるのかもしれない。いや多分そうだろう。ネットに親しんだ日常を送っていると、注意力が散漫になって、読書という集中を要する作業ができなくなるという指摘だ。確かに相当思い当たる節があって、深さに至らない、そして深さを触ろうとすると、ネットで調べものをしたり、そこからまた面白いものに渡っていったりと、際限なく電子の表層を遊んでしまう。どうしよう。かなり真剣に本を読む環境、ネットを触る方法を変えないといけないように思う。