『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』 石井輝男
『パノラマ島奇譚』のタイトルで映画やテレビドラマになっているものはあるのだろうか。
テレビドラマの明智小五郎シリーズで、原作を『パノラマ島綺譚』にしている『天国と地獄の美女』はある。あとは、石井輝男の『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』が、『パノラマ島奇談』と『孤島の鬼』をベースにしている。大筋の原型は『パノラマ島奇談』からとっているが、あくまでも土方巽扮する、菰田丈五郎が、人工的に奇形を生み出し、自分の奇形を嫌悪した妻に復讐するという畸型譚になっている。
土方巽の海岸での踊りを観ていると、大野一雄に振り付けたような形も見え、脈々と暗黒舞踏を流れているものが何かということがひしひしと感じられる。芦川羊子の姿や、火と人間を同じようにしてぶん廻す白虎社の面々も踊っているし、島のシーンはとてつもなく懐かしい。この映画の前年、土方巽は『肉体の叛乱』を上演している、中で使われたシーンやセットが出てくるのが、ぐっとくる。踊っているところは、しっかりと踊っている舞踏手たちの若く、荒々しい見得が素晴らしい。
最後、ややそれまでのトーンとは異って、荒唐無稽に花火とともに薦田と千代の首や手が、宙を浮游するが、これは乱歩の『パノラマ島奇談』のラストからそのままもってきたイメージだ。