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iPad〈1〉 二十世紀からはじめる

ブログを廻っていたら、モデルの女の子がi-padに『二十世少年』を入れて読んでいるのに出会った。iPadの向こうには田園の風景が見えていた。のんびりしている時はiPadでマンガを読んでいます…ハーブティーを飲みながら…

それを見ながら、まず何を入れるかでi-padの先行きが決まるのじゃないかとふと思った。何の根拠もないけれど。今年は、電子書籍が紙の本を駆逐する元年だと言われているが、i-padがそれをするともできるとも思えない。ただはじまっている紙の本の衰退を典型的に見せつけることになるだろう、そして一層の変化を助長するだろうと思っていた。
しかし予想外のことも起きるかもしれない。何かにドライブがかかるということもある。それは意外と何のコンテンツから触るかということによる。3Dの好きな人は3Dのプレゼン用に使うだろう。趣味がかなり決まっている人ではなく、気になるのは何となくiPadを買ってしまった人たちのことだ。その動向は何かを作り出すかもしれない。
新しいメディアの頭脳になんの記憶を入れるのかは重要だ。青空文庫は黴臭いから嫌だ、というi-padユーザーの書き込みを読んだが、僕は青空文庫からはじめて、これを機会に全作を走破するだろうと思っていた。小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』夢野久作の『ドグラマグラ』も入っている。幻想三大奇書の二つが収容されている文庫って素敵じゃないか。新青年時代の、そして小説が確立せず海外作品をパクったり翻案したりしながら、それを貪るように読んでいた時代の日本が透けて見える。
『二十世紀少年』なのかも、と囁くもう一人のボクもいる。まだ注文したi-padがとどかないので、ともだちに電話してみた。二日ぐらいなら貸してもいいよ、仕事が忙しいからと、ともだちは、わざわざ事務所までもってきてくれた。
i-padの最初の記憶メモリーを他人にまかせるのも面白い。もともと必要が高じてできたメディアではない。向こうから来るメディアをさらに向こうの思惑通りに使うのも悪くないと思った。ともだちのi-padには『二十世紀少年』が入っていた。あとは青空文庫全巻。『二十世紀少年』は、映画もマンガもまったく触れていなかった。ちょうどよい。二十世紀からはじめよう。
この原稿は読みながら書いている。最初と最後で思っていることが変化するかもしれない。読みはじめてすぐに『20世紀少年』は、漫画とテレビとともに生きた少年たちの夢の顛末物語なのだと予感した。夢の顛末かぁ…もしかしたら漫画の村上春樹、野田秀樹になってしまう可能性もある。夢をどう描くか、顛末の郷愁をどうするかで、夢自体を売り渡してしまうこともある。そんなことになるなら夢は空き地に埋めておいたままの方が良い。オカルト的な宗教を描きながら、二十世紀少年自体が夢を食い潰すカルト物語としてに作動する可能性もある。

update2010/07/11