column
与之助蕎麦から思うこと
とてつもなく蕎麦が好き。
立食い蕎麦も好き。立食いはかき揚をざるかせいろでいただく。春は尾張屋の海老きり蕎麦を食べていた。あんまり通うからもう今日で終わりですよ、と帰り際レジの人にからかわれたりした。入って坐ろうかなと思ったら新人の女の子が寄ってきて、耳元で今日は売り切れですと呟いた日もあった。くるっと踵を返して駅側の本店に向かい、まだありますか…。ありますよと笑われて席につく。海老きりね。尾張屋の変わり蕎麦は、時期によって、海老、紫蘇、ゴマ、柚子とうつろっていくが、桜色の海老がなりより。あ、茶そばが入る時もあるなぁ。ちょっと甘くてふわふわしてい極上。申し訳ない、荷風さんの天麩羅そばはいただきません。
海老きりの季節が終わったので、新しい蕎麦屋さんをさがしに散策。最近美味しい蕎麦屋さんが増えてきた。浅草ではおがわが、両国ではほそ川が、お気に入り。まぁほそ川はお客を選んだりするからそれは好きじゃないけど、産地違いを出してくれるのは楽しい。浅草橋の更里も通っていたんだけど、この間、5㎝くらいに切れたぶつぶつの塊にになった更級蕎麦を出されて、箸で掴めないくらいで、いくら残ったものを売りたかったといってもこれはないや…。もう行かないかも。けっこう通って挨拶もしてたのにな。気合いを入れて足踏みしながら準備する姿も好きだったんだけど。
もっと新しいところを開発しようと与之助蕎麦に入った。新御徒町駅側。最近ずっと思っていたことがまた気になってしまった。蕎麦の食感ということでなんだろうけど、冷水でしっかり洗って締め上げるのはどうなんだろう。個人的には好きじゃない。しこしこしているのが蕎麦ではないので、別に親の敵とまでにじゃぶじゃぶ洗わなくても…と思う。そういう店はだいたいガテン系の鯔背な、あるいは体育会系のお兄さんと相場が決まっている。パスタと蕎麦は違うけれど、パスタは茹でる時にあんまり揺すらず、でもくっつないように上手に対流が廻るように気をつかう。ふわっと一回混ぜるくらい。それ以上ゆすると表面がつるつるになる。パスタ・パンの穴から出るごぼごぼも余り激しく当てると、後でソースが絡まなくなる。絡むような状態でそおっとでもザクッとあげて、ゆで汁を上手にきるとパスタのソースが絡む。蕎麦の汁もソースでしょ、蕎麦をごしごしやって水がきれいについていたら、汁と蕎麦の間に水の層ができてしまって、汁が絡まない。頑張っているのが見える蕎麦屋さんほど、蕎麦と汁が一体化しない。一体化は麺類の重要事項だと思うんだけど。蕎麦は打ったことがないし、作ったことがないので言っていることは正しいかどうか分らないが、少なくともパスタは上手にゆで汁を表面の残すのがこつだと思う。
さて近所で通うのは池ノ端薮。雷門は時々しか行かない。蓮玉庵もせいろの茹で具合がちょっとゆるくて粉っぽかったことがあって敬遠している。あたり外れが半々なのだが、根津の朝日屋。ランキングに姿も見せないが、おじいさんが打っているのがふわっと甘く出きあがる日がある。汁ともあって快楽。480円。もちろん町場の蕎麦だから大いに期待してはいけない。何となく期待する。池ノ端の薮で食する時は江戸風に三口で咬まず咽で味わう。小さん師匠が絵に書いたように弟子を前に食べさせずに食べていたのが今でも思い出される。歌舞伎では菊五郎さんの蕎麦の食べ方が好き。団十郎さんは役者として尊敬するところはあるけど、あの蕎麦はちょっと。ラーメンみたい。華道家の栗崎さんが半身に坐って足まで組んで、ささっと食べて消えたのがカッコ良かった。その食べ姿を見れたのが夢のようだった。そう言えば中井英夫さんも蕎麦屋で飲むのが好きだったなぁ…。土方さんから新聞紙で包んだ蕎麦をいく先々から送ってもらったことがあった。さて明日は根津の図書館に行くついでに新規開拓をしてみよう。
update2010/05/14


