column
青山ブックセンター再び

目を覚まさなくてはならないのは、私の方の意識だろう。懲りないのは私。
7月31日。日本洋書販売が自己破産申請をした。ほぼ同時に、青山ブックセンターや流水書房を運営する洋販ブックサービスも東京地裁に民事再生法の適用を申請した。洋販ブックサービスには、ブックオフが再建に乗り出すということもあって、営業を続けている。
前回、2004年、青山ブックセンターが倒産した時は、債権者への説明が行われ、日本洋書販売の賀川洋が、乗り出して、債権を放棄(100分の1までに縮小して)させた上で青山ブックセンターを手に入れた。美味しいとこどりじゃないかと噛み付いたのは僕と、アップリンクの浅井隆の二人だったが、後は、良い本屋を残すべきだという説得に応じた形になった。
賀川洋はこの段階で、青山ブックセンター、流水書房、ランダムウオークの3つのチェーン店を手に入れてた。賀川洋は、他に洋書輸入、出版社を所有していて、賀川洋は、川上から川下まですべてもっているのは自分だけだと語っていた。
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賀川洋は、講談社フェーマススクールのセールスマンを起点に、ICGという編集プロダクションを起し、そこに外資のファンド資金を導入してまずタトル商会を買収、そしてタトル商会を足がかりに今度はタトル商会より上位の売上げをしている洋販を買収した。出版ニュースなどで洋販がタトル商会を吸収したと書かれているが、ちょっとニュアンスが違う。タトル商会が洋販を買収吸収したのだ。それが2003年のこと。
賀川は海外で立ちあげた編集プロダクションをICG使ってまずタトル商会を買収したのだが、関与した公認会計士は、加納孝彦。http://www.ma-intercross.com/f_index/cp_results.htmlを見ると、タトル商会の買収だけでなく、メリルリンチによる山一証券の営業譲渡など、M&Aを多く手がけている。賀川は自分の著書の経歴に、99年、日本の洋書取次の老舗、タトル商会の買収に参画。以後、同社社長として、日本での洋書の普及、また、出版界に一石を投じた『出版再生—アメリカの出版ビジネスから何が見えるか』(文化通信社)を著すなど、出版構造改革などの問題にも積極的に取り組んでいると書いている。
賀川は、2003年に洋販を手に入れると、その翌年の2004年に、支援という名のもとに青山ブックセンターのブランドをまんまと手に入れた。M&Aでどんどん拡大しようとしていた賀川だから、青山ブックセンターが簡単に手に入るのを見過ごすはずがなかった。賀川は、本を売ることにさほどの興味はなかった。それは債権者会議の説明にも表れていた。2006年に、賀川洋は、編集出版会社ICGをグループの純粋持株会社に変更してグループの完全支配を果たした。支配下に日本洋書販売と洋販ブックサービスがある。
ICGは、2007年にポラリス・プリンシパル・ファイナンスから資金提供を受けている。以下は今でも読める、hpの記事だ。
このたび、ポラリス・プリンシパル・ファイナンス株式会社(以下、「ポラリス・プリンシパル」)が運営す るポラリス第一号投資事業有限責任組合(以下、「ポラリス・ファンドI」)は、インターカルチュラルグル ープ株式会社(以下、「ICG」)との間で、ICGが資本増強を目的として実施する第三者割当増資をポラリ ス・ファンドIが引き受ける契約を締結致し、増資払い込みを2007年4月27日に行いました。ポラリス・ ファンドIはICGの議決権の約60%を保有することとなります。
ICGは、傘下に出版事業、洋書取次事業、書籍小売事業等を営む子会社各社を持つ純粋持株会社
であり、国内出版業界では唯一と言える川上から川下までの事業をグループとして保有しています。洋 書取次事業子会社である日本洋書販売株式会社は、欧米の書籍・雑誌の版元と50年もの長期に渡り
友好関係を築き、国内書店への洋書取次ではトップシェアを誇っています。また、書籍小売事業子会社 である洋販ブックサービス株式会社は、青山ブックセンター、流水書房、ランダムウォークという3つの 特徴のあるブランドでの店舗展開を行っております。出版事業子会社であるIBCパブリッシング株式会 社においては、広く認知されている英語教育書籍 ラダーシリーズを擁しており、英語教育マーケットに 限らず、一般への普及を図っております。
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今回、前回の青山ブックセンターに続いて、ランダムウォーク京都寺町店の倒産で債権を被ってしまった。もちろん青山ブックセンターにも本は行っている。取次経由で回収できればよいがもちろんどうなるか分らない。東京のランダムウォークをどんどん閉店させていって、今や、関西に二店残っているだけだったのだから、この段階でランダムウォークと付き合っていたのはいかにも間抜けだった。流れが読めていないとつくづく反省した。良心的書店というイメージにやっぱり引きずられてしまっている。青山ブックセンターであれだけ痛い目を見ているのに、まったく懲りていない。良い本屋という看板を利用して、ヤクザな動きをしているグールプに属しているのに…。
青山ブックセンターは営業を続けている。ランダムウォークは倒産だ。ブックオフはいらない書店をすでに切り捨てている。洋販ブックサービスの経営する、青山ブックセンター、流水書房、ランダムウォークとブログに書いて、ランダムウォークは洋販の経営だよと注意を受けた。出版ニュースを見ても洋販の経営の…と書いてある。しかし2007年のポラリスの公式書類に、『洋販ブックサービス株式会社は、青山ブックセンター、流水書房、ランダムウォークという3つの 特徴のあるブランドでの店舗展開を行っております。』と書かれている。今回の倒産に関して、自己破産の洋販の方にいらないランダムウォークをつけて、洋販ブックサービスを使いやすくしてブックオフに渡しているのだ。
ICGは解散というけれど、そんな責任のとり方で良いのか。賀川洋は1年前にICGから逃げている。前回の青山ブックセンターの倒産の時にも、取次の栗田だけが債権を回収していたという話もあり、裏での密約がありそうで不透明な感じは否めない。青山ブックセンターが説明もなしに、ブックオフの経営に移行するというのは、どうなんだろう。密室の中でのやり取りで、良心的書店が金融的戦略の道具になっている。M&Aが悪いとは思わない。資金の枯渇している日本の経済に外資を導入するのは大切なことだ。しかし、本の流通にも興味がないのに、ありそうにトークして、周辺をその気にさせた賀川の罪は重い。出てきて何か発言するべきだろう。青山ブックセンターに二度騙されて、二度債権放棄をさせられる小出版社もあるのではないだろうか。良心的出版社のことを思い…などと言っていた賀川洋の債権者会議でのトークを思い出すと腹立たしい。
洋販は、どんどんランダムウオークを閉店させていって、関西に二店残っているだけだった。この段階で付き合っていたのはいかにも間抜けだった。流れが読めていない。良心的書店というイメージにやっぱり引きずられてしまっている。青山ブックセンターであれだけ痛い目を見ているのに、まったく懲りていない。良い本屋という看板を利用して、ヤクザな動きをしているグールプに属しているのに…。良い本、良い書店、良い出版社、良い店員…。いい加減、目を覚まして、全体が駄目ならむしろそんなものは無くなってしまった方が、覚悟が決まるかもしれない。騙されるのはもういい加減にしよう。
信長が比叡山を根絶やしにしようとした時、光秀が、中には良い僧侶もいますから、それは助けて下さいと訴えたのに対して、良い僧侶がいるから始末が悪いんだと答えた。そして信長は比叡山を焼き打ちにした。信長の殺戮を良いというのではない。良い僧侶が逆に腐敗のあるままの存続を支えているということになる。ということを言いたいのだ。良い書店、良い書店員が腐っている本の流通を、腐ったままホールドしているのだ。今回でも、ランダムウォークの店員が悪いわけではない、前回でも青山ブックセンターの書店員は素晴らしいということを言った瞬間に、攻め手が弱くなって、存続の方向に向っていく。
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取次の柳原書店の倒産の時は、倒産一ヶ月前に店売用の在庫を大量に増強するとのオーダー。柳原も頑張っているなと思ったら、本を大量にとりこんだまま倒産。その本は返ってこないばかりか、解散の手続きのなかでゾッキルートに流れてしまった。取引きの中小出版にさらに負担をかけるような倒産ぷり…。こんなヤクザな感じなら、全面否定できる。
でも良心的なランダムウォークの現場や青山ブックセンターの現場を誰も責めない。ランダムウオークの現場や青山ブックセンターの現場は、倒産を知らなかったという人もいるけれど、次々閉店に追いやられている状況で、それはないだろう。渋谷の青山ブックセンターも開店してすぐに閉店しているのだから。委託という特殊な方法で本を預かっている(出版社は本を貸しているんだよ。とくに中小出版社は。大手はお金をもらっているけど)んだから現場にもその責任はあるし、前例もあるんだから知らないなんて…意識が低すぎる。
そして「良い」を信用している自分の意識は、さらにさらに低すぎる。責任感もなさすぎる。いい加減、目を覚ましたらよかろう。何度、同じことを繰り返せばすむのだ。
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ブック・オフは少し前に丸善から7億円のリベートをもらっていて、それをさらに坂本会長が懐にいれていた。坂本会長はセクハラもしているし…。まったくもう。
日経の記事は
ブックオフコーポレーションは6月19日、坂本孝会長が、フランチャイズ加盟店に什器を納入した丸善から合計7億4200万円の手数料、いわゆる「リベート」を受け取っていたと発表した。外部の専門家などで構成する調査委員会が報告した。坂本会長は全額をブックオフに返還し、同日付けで引責辞任する。
7億あったらどれだけ面白い本が作れるのだろう。そんなブックオフが青山ブックセンターの再建だって…ちなみに丸善は、この不祥事が引き金になって大日本印刷の傘下に入ることになる。この事件がばれなかったら、ブックオフは丸善を傘下に収めたんだろうな。そして青山ブックセンター。賀川洋がやろうとしていることと同じことをブックオフはやろうとしている。
すごいのは、ブックオフが新刊売りの書店をもつと、これで二束三文で仕入れた古本を新刊として新刊書店から返品して逆流するルートを確保することができるということだ。元々そんな疑惑があったブックオフ。そんなセコイことを思うかもしれないが、リベートを取って私腹を肥やす人間が指揮していた会社にモラルなんてないから。偽装と一緒で、ばれなければ何をやっても良いということだろう。
良心的書店は、マネーゲームの対象になってしまっている。金融的な再編成に使われる良心的書店なら、少なくとも良心的という看板は下ろして欲しい。というかいい加減、目を覚ました方がよい。(もちろん自分にもっとも強く言い聞かせているのだが)かなり瀬戸際まで追いつめられた感がある、中小出版社と書店だ。ペヨトル工房のような特殊出版社は、本の流通に近寄れなくなっている。本当に行き場がなくなってしまっている。どうやって本を販売したらよいのだろう。地方小出版社の直売書店書肆アクセスも閉店した。ネットにと言うがAmazonも大阪屋主導の大手優先販売網だし、実際にはネットへの逃げ道もない。(て、ここまで書いてAmazonが大阪屋扱いじゃなくなっていることに気がついた)Amazonを検索に使っている人も多いだろうと思うが、新刊の夜想(ヴァンパイア特集で実際にあったこと)は1週間で品切れになってそのまま1年以上放置される。検索で来た人は、ああ、もうないんだと思ってしまう。載せてよ、在庫あるよ! って再三、大阪屋のAmazon担当に連絡してフォローしてもらったんだけど、それもできなくなった。
大手出版社は委託でいれた新刊の大半の売上げを払ってもらい、返品の手数料もない。小出版社は、入りの率もかなり悪いし、7ヶ月先の精算だし、しかも分戻しを先払いするし、三割保留はあるし、返品の手数料も一律かけられている。こんな不公平ななかでなおかつ大手のことしか考えていない取次の体質をAmazonもそのまま受け継いでいる。
おそらく出版業界の大編成が近々、起きるような気もするが、その中で、小出版社は生きのびられるのか、個性的な書店は大丈夫なのかと本気で思う。マネーゲームになるなら、本も資本主義でよい。そして許認可制度のような取次でなく、自由で平等な(売れる本が売れるという)流通で、商品としての本を流通させて欲しい。大手出版社は、売ることにきゅうきゅうしていて文化物として守るべきものを作っているわけではないのだから。再販制度で守らなくてもよいだろう。自由競争にしようよ。
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それにしてもと思う。コムスンにしても、ノバにしても、ブック・オフにしても洋販にしても、破綻したあとは、代表者の下品な金銭感覚の嫌な感じだけが後に残る。どうして日経とかの経済マスコミが彼らを時代の寵児として持ち上げるのだろうか。業界に修復不能の傷を残すような人物のヤクザ性をなんで讃えるのだろうか。いかがわしさは普通に見抜けるだろうにと思う。もし見抜けないなら、日経もこうした中身のない金融ゲームの担い手だ。(きっとそうなんだろうな…)それは、ヒーローであるときに朝青龍や亀田を褒めちぎり、マイナスがでると罵倒し、しばらくすると無かったことにする国民性は、まさに何度でも騙してくださいと言う体質なんだろう。本当に懲りない私だ。賀川洋や、ブックオフは、そこをうまく突いて仕事をするのだろうが、こういう流れで困ってしまうのは、大きくない規模で面白いことや大切なことをやろうとしている書店や出版社だ。
連鎖で倒産したりする出版社や取次がないことを祈りたい。
update2008/08/01


