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『禽獣』 川端康成

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昭和十年、新進気鋭のダンサーたちが、次々と作品を発表していた。

高田せい子、崔承喜、江口隆哉、エリアナ・パヴロバ、そして石井漠、石井小浪の石井漠舞踊団。そして石井漠舞踊団の新進気鋭のダンサー石井みどりが、第一回創作舞踊発表会を日本青年館で開催すれば、その三日前に石井小浪が日比谷公会堂で新作舞踊を発表している。二つの舞踊雑誌が創刊される。

翌年の昭和十一年、石井みどりは独立公演を行い、石井小浪、高田せい子、崔承喜、江口隆哉、エリアナ・パヴロバは、前年同様、新作を発表している。日比谷公会堂は踊りの会で賑わっていた。石井小浪舞踊団 石井みどり舞踊団 江口・宮舞踊団 崔承喜舞踊団 高田せい子舞踊団が雄を競っていたと思われる。
2・26事件が起きるのは、この昭和十一年だ。

川端康成の『禽獣』が書かれたのは、昭和十年。日比谷公会堂に踊るダンサーとその夫の伴奏弾きが出てくる。石井みどりは、この昭和十年にヴァイオリニストで作曲家の折田泉と結婚して独立している。

余り良く描かれていない、ダンサーと伴奏弾き。飼っている禽獣を愛でながらも次々と育てそこなって殺してしまう、そして場違いな治療をする、そして死んでしまうとぽいっと棄ててしまう、残酷で利己的な私が出てくる。その禽獣にダンサーを重ねて描くという作品だ。

三島由紀夫が、本人が否定して、そこに本質が顕れると言っている、二つの作品の一つが『金色の死』でもう一つが『禽獣
』である。『金色の死』は失敗作だが、『禽獣』は名作だとも言っている。
どうかな…。

update2008/04/23