夜想#ゴス
『フランケンシュタイン』(1818)メアリー・シェリー
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メアリーが『フランケンシュタイン』(1818)を書くきっかけになったレマン湖での一夜は、1816年6月、そこにはバイロン、バイロンの愛人、シェリーのカップル、医者のポリドリがいた。この時、メアリー・シェリーは、まだ愛人であってシェリーには、妻ハリエットがいた。シェリーは、妻ハリエットを「霊の妹」としてメアリーと三人で暮らしたいと本気で提案していた。そして12月ハリエットは自殺する。
バイロンもまた妻から離婚を迫られつつ、クレアは妊娠中、そして姉との間に子供をもうけるというスキャンダルを抱えていた。
『フランケンシュタイン』のテーマは、思想や宗教に翻弄される家族愛であり、その苦しさ哀しさを描いたものである。フランケンシュタインの家族構成にも、怪物があこがれる家族にも、異母兄弟の純粋な愛が描かれている。バイロンやシェリーの奔放な生き方に翻弄されるシェリーの女性としての思いが強く反映している。
フランケンシュタインは、錬金術を学びさらに産業革命以降のイギリスの自然主義的な思想や科学万能主義に影響され、科学研究に打ち込み生命を作れるようになった。フランケンシュタインによって生まれた怪物は、次々にフランケンシュタインを愛するものたちを復讐のために殺していくが、その間に、言葉を覚え、小説を読み、思想を身に付け、愛を知るようになる。
怪物の苦しみは、怪物の哀しみと一言で言えるような苦しみではない。怪物は言葉と理性を獲得していたからだ。フランケンシュタインも運命の罰を受けるように、生き続けながら苦悩をし、一人ずつ愛するものを怪物に殺されていくのである。
メアリーは体験を色濃く反映しながら『フランケンシュタイン』をロマン主義的な筆致で上品に描いている。
update2008/01/19